エドワード編 Stage2 シティ・スカイリンク
1. 決闘
前編: エドワードはイバからタルシンを紹介される。彼の苛烈さを受け流しつつ、決闘ルールでの勝負にもつれ込む。
後編: タルシンは勝敗に関係なくエドワードに偉そうな態度を取る。
勝負しよう [用語]
原文
Talsin: I know, a Duel would be perfect. We'll see how long you can keep up with me.
現行訳
タルシン: 勝負しよう、お前がどれだけおれに追いつけるかが分かる。
試訳
タルシン: デュエル・ルールがぴったりだろう。おれにいつまで付いてこられるか、試してやる。
"Duel" のキャピタライズ(1文字目を大文字にする処理)が無視されています。ここは決闘(デュエル)ルールで対戦する回ですから、タルシンがエドワードとの対戦に決闘ルールを選択したという意味が伝わる必要があります。
2. ゴーストバトル
前編: エドワードはイバからタルシンのゴーストと走るよう励まされる。
後編: エドワードはエイダと話すうち、タルシンのテクニックを検討する。
時間が足りなさ過ぎた [誤訳] [重要]
原文
Edward: Maybe I was right at the start... I'm not sure I'm cut out for this.
Ibba: You wanna give up already? Come on, you've got talent, don't waste it!
Ibba: You've just gotta put in the laps. Even top racers need time to learn a track.
Ibba: Get out there again, follow Talsin's Ghost, and I guarantee your hard work will payoff.
Edward: I guess, I haven't given it much time yet...
Edward: Alright, I'll give it another go. I'm going to show Talsin what I'm really made of.
現行訳
エドワード: 最初からそうだったけどオレには向いてないのか...?
イバ: もうあきらめんの?おいおい、才能は無駄遣いすべきじゃないぜ!
イバ: 始めたばっかだしな。トップレーサーですらコースを知るのに時間がかかる。
イバ: もう一回出て、タルシンのゴーストを追うんだ。努力は報われる。心配すんな。
エドワード: 時間が足りなさ過ぎた...
エドワード: それじゃ、もう一回やろう。 タルシンにオレの実力を見せつけてやる。
試訳
エドワード: 最初から思ってたんだ...やっぱりオレに向いてないのかも。
イバ: もう諦めるのか?エドワード、才能を無駄にすることはないだろ!
イバ: そういう時は走り込んで、ラップを重ねるんだよ。トップレーサーにだってコースを覚える時間が必要だ。
イバ: またコースに出てタルシンのゴーストを追ってみな。努力が報われるってことは、僕が保証するよ。
エドワード: そうだな...考えてみりゃ、オレはまだ始めたばっかで、大して時間をかけてねえ...
エドワード: よーし、もう一回やってみるぜ。次こそはタルシンに、マジの実力を見せつけてやる。
先に「致命的な破綻は多くはない」と書きましたが、さすがに「時間が足りなさ過ぎた」は削り落としすぎで、"yet" が完全に抜け落ちています。
この話の流れとしては、走り込みの重要性を強調するイバに対し、エドワードが自分の努力の足りなさ(時間をかけていないこと)を省みているわけです。あるいはエドワードの台詞はこのコースに来て間もないから、時間を取れなかったから、という意味でもいい。
いずれにせよ現行では唐突な返しでしょう。せめて「かける時間が足りなさ過ぎた、ってことか...」のようになっていれば、イバの台詞から自然に繋がっていました。
試訳は逆に、「時間をかけていない」を残しつつ文脈を補おうとして冗長ではありますが、くどくても意味は通っているはずです。
どうやってコースのレイアウトがわかったの? [誤訳]
原文
Ada: How are you finding the track so far? It's tough isn't it?
Edward: Yeah, those tight corners are crazy! Racing was kinda stressful, but following {T2E}'s Ghost helped.
現行訳
エイダ: どうやってコースのレイアウトがわかったの?難しくない?
エドワード: ああ、きついコーナーはヤバい!レースはストレス感じるけど、タルシンのゴートが勉強になってさ。
試訳
エイダ: このコースはどう、エドワード? 難しくない?
エドワード: だな。あのきついコーナーがヤバいよ! レースはストレス感じるけど、タルシンのゴーストを追っかけて何とかなってる。
"How are you finding A?" は慣用的な表現で、「どうやってAを見つけた?」ではなく、「Aをどう感じた?」、「Aはどう?」といったシンプルな問いかけのフレーズです。"How are you finding Tokyo?" なら「東京はいかがですか?」。
試訳では "so far" (今のところ) の訳を落とし、名前呼びを足して自然な呼びかけになるよう調整しています。
コーナーの前でブレーキって思ってたんだよな [表現]
原文
Edward: Talsin always slams on the brakes in the middle of corners. I thought you were supposed to brake before a corner...
現行訳
エドワード: タルシンはいつもコーナーの真ん中でブレーキをかける。コーナーの前でブレーキって思ってたんだよな...
試訳
エドワード: タルシンはいつも、コーナーの途中でブレーキを踏んづけてくんだよ。ブレーキってコーナーの手前でかけるもんだと思ってたけど...
レースで「コーナーの真ん中」と言うと、道路のセンターなのかコーナリングプロセスの途中なのかが即座に判断できないので、「途中」のほうが適切でしょう。
また、"slams on the brakes" と身体性のある言葉を使っているので、「ブレーキをかける」よりも「踏む」「踏んづける」のほうが会話に雰囲気が出るように思います。
本題の「コーナーの前でブレーキって思ってたんだよな...」という文は、意味は通りますが単に読みづらいです。
1文目で「○○は~」という文型でタルシンの話をしていることに読者は引っぱられ、2文目も暗黙的にタルシンの話かと一瞬錯覚してしまい、可読性が落ちています。エドワードの思うことを表現するには「オレ(エドワード)」か「ブレーキ」を先頭に置くほうが収まりが良いです。
現行:
タルシンはいつもコーナーの真ん中でブレーキをかける。
コーナーの前でブレーキって思ってたんだよな...
修正案A:
タルシンはいつもコーナーの真ん中でブレーキをかける。
(オレは)コーナーの前でブレーキって思ってたんだよな...
修正案B:
タルシンはいつもコーナーの真ん中でブレーキをかける。
(ブレーキは)コーナーの前だと思ってたんだよな...
このように1文目と2文目で文型を揃え、対比の対象をはっきりさせることで可読性が上がります。
試訳ではB寄りで、かつ "you ~" の一般論的な語法を拾って「~ってもんだと」という言い回しを加えました。
3. タイムアタック
前編: エドワードはタイムトライアルに意気込みを燃やす。
後編: エドワードの走りがタルシンに認められる。
すぐにそのレベルになるといいな [誤訳] [重要]
原文
Talsin: I saw your driving out there. I suppose I should be impressed, you are improving quickly...
Edward: Thanks! I learned a lot from racing you. Our goals may not be the same, but I think we both love driving in our own ways.
Talsin: I can respect that.
Edward: I also saw your friend, Ada, is already driving with both Riku and Jay?
Talsin: I hope I can reach that level of skill soon.
現行訳
タルシン: お前の運転見たけど凄かった。すぐに改善してるし...
エドワード: ありがと!あんたとのレースでいっぱい学ばせてもらった。目標は同じじゃないかもだけど、オレたちはそれぞれのやり方の運転が良いんだと思う。
タルシン: その通りだね。
タルシン: お前の友達のエイダがもうジェイとリクのどっちも運転してるらしい。
タルシン: すぐそのレベルになるといいな。
試訳
タルシン: コースでの走りを見たよ。あんたを見直さなきゃいけないな。上達が本当に早くて…
エドワード: サンキュ! お前さんとのレースで、たくさん得るものがあったよ。目標とか、やり方が違っても、オレ達がドライブを好きなのは同じなんだなって。
タルシン: その考え方、尊敬するよ。
タルシン: あんたの友達のエイダも、もうリクやジェイと走ってるみたいだな?
タルシン: おれも早くそこまでの腕前になりたいもんだ。
主語がありません。文脈に依存しない単文の誤訳です。
"I hope" (といいな)はともかく、"I can reach that level" レベルに到達する主体(おれ)を省略したため、タルシンがエドワードを励ましているのか、自身の上達を望んでいるのかが分かりません。
すごいわけじゃないけど [誤訳] [重要]
原文
Viv: It seems like you've won over Talsin. That's no mean feat. Great driving out there too.
現行訳
ヴィヴ: タルシンに勝ったみたいね。すごいわけじゃないけど。そこまで走れたのはよかったね。
試訳
ヴィヴ: タルシンに勝ったみたいね。簡単なことじゃないよ。コースで素晴らしいドライビングができることもね。
意味の反転する重大な誤訳です。
"no mean feat" の意味は以下の通り、「並々ならぬ功績」にあたるイディオムです。
no: 否定
mean: 平均的、ただの、意地悪な
feat: 偉業、功績、手柄
「無意味な手柄」という誤訳は、若者が励まし合ってレースの練習をするストーリーだと知っていれば、普通は出てこない解釈でしょう。
同じことはエイダ編Stage4でも起きていて(話者もヴィヴで同じ)、基本的に心優しい上級者のヴィヴが時々やたら辛辣になってしまっています。
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