エイダ編 Stage2 シティ・スカイリンク
1. ゴーストバトル
前編: エイダはリクのゴーストに圧倒される。
後編: イバはジェイに声をかけてエイダにコースのコツを教えるよう頼む。
特になし。
2. 決闘
前編: ジェイはチューンダウンしたマシンで前を走り、エイダに走りを見せる。
後編: エイダはジェイから学んだことをイバに話す。
前に抜かされたことなかったぜ
原文
Jay: Hah, there wasn't much risk of me getting too far ahead in that Race! I'm impressed, Ada, you learn quickly.
現行訳
ジェイ: ヘッ、レースであんなに前に抜かされたことなかったぜ! すごいよエイダ、飲み込みはやいんだな。
試訳
ジェイ: フゥ。このレース、離れすぎる心配なんて無用だったな! 驚いたよエイダ。上達が早い!
「離れすぎないように気をつけるから、後ろからしっかり見ていてくれよ」と言って始めたレースで、抜かされて負けたジェイの台詞。意訳の範疇ではあると思うが……。
自力で曲がれるようにならないと
原文
Ibba: You found it useful then?
Ada: Definitely! I can't brake like Riku, but I can lift off the throttle for a similar effect...
Ada: Timed right I can actually carry more speed through the corner even though I have to start slowing down earlier.
Ada: I just need to make sure I can pick my turn in point without Jay there to guide me.
Ibba: After a few more practice laps, I bet you'll be able to do it blindfolded.
現行訳
イバ: 役に立った?
エイダ: もちろん! リクみたいにブレーキはかけられないけど、スロットルを離せば同じだし...
エイダ: タイミングが合えば、もっと早めに減速しないといけない時でも、コーナーをもっと速く走られる。
エイダ: ジェイのガイドがなくても、自力で曲がれるようにならないとね。
イバ: 数周練習したら、目隠ししてもできるさ。
試訳
イバ: お役に立てたかな?
エイダ: すっごく!私にはリクみたいなブレーキングはできないけど、アクセルを離して同じようなことができるのが分かったし…
エイダ: そのタイミングが良ければ、リクよりずっと手前から減速しなくちゃいけなくても、コーナーはもっと速く抜けられるんだ。
エイダ: ターンインするポイントを、ジェイのガイドがなくても見極められるようにならないと。
イバ: あと何周かすれば、目隠ししたって出来るようになるさ。
これも1面に比べれば軽度ではある。
いや、「走られる」の誤字はともかく、「曲がれる」と「ステアリングを切り始めるポイントを知る」とでは相当な違いだとも思うし、けっこう車ゲームらしい話をしているので、原文の意味の伝わる読みやすい文章であってほしいんですが。
3. レース
前編: エイダはリクにレースを挑む。
後編: エイダはリクとヴィヴから「道筋」を見つけろと諭される。
否定はできない
原文
Talsin: I still don't understand why you dive into corners like that?
Talsin: Even with my limited experience, I know you are supposed to take the straightest line possible.
Riku: I know... Look, it may not be the absolute fastest line, but you can't deny...
Riku: It's much more exciting!
現行訳
タルシン: お前、何でそうやってコーナーへ突っ込むんだ?
タルシン: おれは経験豊富じゃないけど、できるだけまっすぐ走る方がいいって。
リク: そうだね...その、絶対最速なラインってわけじゃないかもしれないけど、否定はできない...
リク: もっとエキサイティングなんだ!
試訳
タルシン: リク!お前のそのコーナーへの突っ込み方、ワケ分かんねえよ。
タルシン: おれも素人だけどよ。直線に近い走り方のほうがいいんじゃねーのか?
リク: ああ…このラインは絶対的な最速じゃないだろうな。だが否定できないことが一つある…
リク: こっちのほうがエキサイティングだ!
分からなくないですか?タルシンの指摘を否定してないのか、自らのドライビングを否定できない(させない)のか、パッと見だと何を指してるのか不明瞭です。
すごい!これでいいはず
原文
Riku: Oh, Ada, are you finally ready for our race?
Ada: Yeah, just about... I got a few tips from Jay, and I think I'm ready to put them into action.
Riku: Great! This should be good then... Let's go!
Talsin: Yeah... Umm... Good luck out there, Ada.
現行訳
リク: ああ、エイダ、ついにレースの準備ができたのかい?
エイダ: ええ、ちょうど... ジェイからヒントをもらったの。実践できると思う。
リク: すごい!これでいいはず...行こう!
タルシン: ああ...うーん...行ってら、エイダ。
現行訳
リク: おっ、エイダ。ようやくレースの準備ができたか?
エイダ: うん、だいたいはね…ジェイから教わったことを、実践できると思う。
リク: よし!それなら問題ないな!行こうぜ!
タルシン: …あー、レース頑張ってな、エイダ。
「否定はできない」のくだりから直接続く場面。2面は特にリクが全体的に変で、日本語になっていても会話としては読めないです。「ドリフト狂のアンチャンが、レースの準備を整えた挑戦者をコースに連れ出す」という場面で「これでいいはず」、なにがいいんだ?
ラストスパートで速度を上げる
原文
Riku: You managed to resist the temptation to follow me and instead prioritised exit speed...
Riku: Not my style personally, but you played to the strengths of your car.
Riku: The way you drove reminds me a lot of Jay, you did well to take on their advice.
現行訳
リク: 君は僕に追いつこうとしないで、ラストスパートで速度を上げることを優先したのか...
リク: 個人的に、僕のスタイルじゃなかったけど、君の車の強みでプレイしたようだね。
リク: 君の運転はほんとジェイのようだ。彼らのアドバイスをよく取り入れている。
試訳
リク: 俺を単純に追いかけるんじゃなく、コーナーの脱出速度を優先したのか…
リク: 俺の流儀とは違うが…車の強みをよく生かしていたな。
リク: ジェイを思い出させる走りだった。彼らのアドバイスをよく取り入れてるね。
レイクサイド・ループで "quick lap" を「最速の走り」と誤訳した回の類例。"exit speed" を「ラストスパート」と訳すことには自動車レース関係の知識の不足を感じます。
ここでは英語のかわりに車とレースゲームとストーリーについて補足しておきます。
このステージのテーマはコーナーです。主人公エイダはブレーキングとターンインポイントの習得に苦戦し、ボスのリクは友人タルシンから「コーナーに(直線的でない)ダイヴをする意味不明な奴」と評されます。
本文を読めば、リクのコーナー進入時のブレーキングポイントが最終的なエイダのブレーキングポイントよりも奥、遅い箇所にあるのは明白です。コーナーにダイヴするという表現からも、リクがいわゆる「突っ込み重視」の走りをしていることが分かります。
引用した原文の先頭、"temptation to follow me" 距離を詰める誘惑とはつまり、ストーリー上のリクのスタイルが如何にブレーキを遅らせられるかという「突っ込み勝負」ファスト・インの勝負であることを反映しているわけです。
エイダはこのコースで「コーナー手前で(リクより)早めに減速すると、むしろ高速で回れる」という典型的なスローイン・ファストアウトのテクニックをジェイから学びました。リクの言うところの「You managed to resist the temptation to follow me(距離を詰める誘惑に乗らない)」なドライバーになるという意味を持っているわけです。
エイダがジェイから学んだこと、リクとの勝負を分けたものの焦点は、少なくともストーリー上はレース全体のマネジメントではなく、コーナーの入口と出口、あるいはコーナーとコーナーの間のスピードのマネジメントにあったことは間違いありません。したがって、 "instead prioritised exit speed" の訳は「(コーナーの)脱出速度を優先した」になるのです。
道筋と経路
原文
Riku: The way you drove reminds me a lot of Jay, you did well to take on their advice.
Riku: You should be careful though, of relying too much on others...
Riku: To really grow you need to find your own path.
Ada: I don't really get what Riku meant...
Ada: If I'm taking a corner as fast as possible, does it matter the "path" I took to get there?
Viv: Just remember that every car has a different balance and that balance determines what is fastest.
Viv: You can't always get that from watching another racer, you need to experiment and try things for yourself.
現行訳
リク: 君の運転はほんとジェイのようだ。彼らのアドバイスをよく取り入れている。
リク: でも、誰かに頼りすぎるのは十分気を付けないと...
リク: 本当に成長するには、君自身の道を見つけることだ。
エイダ: リクの言った意味がさっぱり...
エイダ: できるだけ早くコーナーを曲がる時の 「経路」 って大切なの?
ヴィヴ: 車にはそれぞれバランスがあって、それが速さを決めるの。覚えておいて。
ヴィヴ: 他のレーサーを見るだけでできるようになるとは限らないから、自分で試さないとね。
試訳
リク: ジェイを思い出させる走りだった。彼らのアドバイスをよく取り入れてるね。
リク: だが気を付けろよ。他人に頼りすぎるな。
リク: 本当に成長するには、君自身の道筋を見つけることだ。
エイダ: リクは何を言いたかったんだろう…
エイダ: もしコーナーを最速で曲がりたいとして、その 「道筋」 が大切ってことかな?
ヴィヴ: 車にはそれぞれバランスがあって、そのバランスが最速を決めるってことよ。
ヴィヴ: バランスと最速…それは見るだけで理解できるとは限らないわ。自分で試してみないとね。
"path" を見つけろと言われ、"path" について考えるシーンなので、訳語は揃えた方がいいと思います。これもストーリーのテーマに関わる部分がさらりとスポイルされている箇所。
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