間ヶ岾昭三というテロリスト

過激派組織・霧の護り手の日本における実質の指導者、本編前半における最大の敵として立ちはだかる間ヶ岾昭三。プレイヤーの知る彼は裏世界から来たということになっているが、その出自や登場経緯など明かされなかった点はかなりあったように思うので、わかっていることを整理しつつわからないことの推量をしていきたい。

簡易年譜

表記の年代はゲーム開始年度をベースにした便宜上のもの。生年は不明だが2014年(時間停止を考慮すると+2年)時点で30代と言われているため、1975年から1986年あたりと推定できる。

裏世界(TESTAMENTの世界)

  • 1970~80年代

    • 12月10日に誕生(第83回うのすけズバリ!)。

    • 子供の頃の夢はサッカー選手(第206回うのすけズバリ!)。

  • 1990~2000年代

    • 高校時代に共生派思想に興味を持ち、大学卒業後に霧の護り手に加入(第206回うのすけズバリ!)。

  • 2003年

    • 推定二十代でリヒャルト・アメディックと親しくなり、彼とその家族をたびたび日本に招く(時の異邦人)。

  • 2004年

    • 風飛市連続児童誘拐事件に関与。表世界からの介入により警察に逮捕される(時の異邦人 Christmasなど。時の異邦人 Halloweenによれば第6次侵攻以前の出来事のようだ)。

  • 2005年

    • 第6次侵攻発生。

    • 2004年から2005年までの間に、リヒャルト・アメディックが霧の護り手との内通により極刑に処される(風飛の丘に花は散り)。

  • 2014年

    • 第7次侵攻発生。

    • 侵攻後の混乱に乗じてJGJに入社(風飛の丘に花は散り)。

  • 2015年

    • 9月の第8次侵攻までに神宮寺一族の大半を暗殺し、JGJを掌握(風飛の丘に花は散り)。

  • 2015~2018年頃

    • JGJの総力を挙げて国際宇宙基地アポロンを完成させ、一部の権力者たちや霧の護り手構成員と共に宇宙へと避難(第22話-9)。

  • 2018年

    • アポロンにゲートと魔物が発生、避難民が虐殺される。ただし先んじて間ヶ岾はアポロンから姿を消していたとされる(1679、第49話-1)。

空白期間

推定五十代で表世界に現れたことを考慮すると、15~20年程度の不明な期間が存在する。いつ裏世界を去り、どこで何をして、いつの表世界に現れたのかは明らかになっていない。見た目通りの歳かどうかすら不明ともいえる。

この間に第15次侵攻や120年後の霧の絶滅(第26話-12)など、知るはずのない情報を得た可能性が高い。果たすべき「真の共生」の意思を固めたのもこの頃と思われる。

表世界

  • 2014年度

    • 廃棄された旧科研施設を使い、魔物制御技術を獲得(愚者の檻)

    • 一幹部であった表世界の自分を殺害し、霧の護り手日本支部の実質的な指導者となる(阿川奈鬼譚)

  • 2014+1年度(2015年)

    • 碧万千洞に仕掛けてあったトラップが学園生を襲う(瑠璃色万華鏡)

    • JGJフューチャー襲撃。神宮寺樹を誘拐(JGJクライシス)

  • 2014+2年度(2016年)

    • 科研襲撃。転校生の前に姿を現す(ミネルヴァの梟)

    • 神宮寺樹を解放しつつ、ライ魔法師団に魔物制御技術を渡す(日英魔法少女共同戦線)

    • 国連総会襲撃(UNGA)

  • 2014+3年度(2017年)

    • 議員会館襲撃(七・〇一事件)

    • 魔物操作技術を使ったアジ活動(大救出 GREAT ESCAPE)

    • ウィッチ死亡(オペレーション・サイバリア)

    • 神宮寺光男の告発と出頭(第44話)

    • 魔物化して「真の共生」を果たしたのち、霧散(インベイジョン)

    • ジェイス・カルマン名義の怪文書公開(スターゲイザー)

  • 2015年度(2018年)

    • 特級危険区域スペインの霧から間ヶ岾の残留思念が一時的に出現(第57話)

補足と雑談

出身世界

間ヶ岾には児童誘拐を表世界の学園生に阻止された記憶や、幼少期のウィッチ双美心との面識があるため(第41話-9)、何か予想外のトリックが無い限りは、彼の出身世界は『時の異邦人(Christmas, Halloweenなど)』の世界≒TESTAMENTの世界であると見てよい。

経緯の詳細

裏世界時代

大学卒業後すぐに霧の護り手に入り、10年としないうちにアメディック少将(ウィッチ双美心は「大佐」と呼んでいたことがある)に取り入っているあたりはさすがというべきか、光男に人心掌握術を評価されるだけのことはある。表世界では間ヶ岾の取り付く隙は無かったらしく、逆にアメディック少将主導で共生派の一斉摘発に至っており、この表裏の世界の違いを鳴子はチトセの工作のせいと断じている(デクのブレイクスルーが遠因となったか、それともより直接的な働きかけがあったのかは、解釈の余地があるかもしれない)。

約10年前(2004年頃)、アメディック少将の失脚と風飛市連続児童誘拐事件の前後関係はまだ整理できていないが、たとえば少将が逮捕され、軍とのパイプを失ったから誘拐に手を出していたという可能性は考えられる。TESTAMENT世界では転校生たちのせいで紆余曲折あったが、真に「正史」の裏世界の彼は双美心の誘拐も軽々こなしたのだろうか。

本編と同時期、30代の頃には内通者の手引き(表世界と同様であれば神宮寺光男とカイザーリンク少佐)もあってJGJへの入社を果たし、神宮寺の血族を次々に暗殺。スポークスマンとしての頭角を現してJGJを共生派に仕立て上げたのち、国際宇宙基地・ISBアポロンへの脱出計画に参加する。

その数年後の裏世界では、アポロンにゲートが発生し魔物が現れたとされる。このとき間ヶ岾は少なくとも映像には映っていなかったため(鳴子はこれを地上に降りたと判断している)、裏世界での彼の足取りはこのあたりで途絶えることになる。

宇宙と空白期間

宇宙にいたはずの間ヶ岾がいつ裏世界から消え、いつ表世界に出現したのかの手掛かりはほとんどない(と思う)。分かっているのは彼の外見が表世界よりも20年ほど年長に見えることくらいで、その間には本編に描かれていない超常的な体験があったのではないかと思わせるものがある。そういった底知れなさは、彼の偏執ともいえる思想や、「裏世界」と呼ばれることを強硬に嫌うこだわり、第15次大規模侵攻と120年後の霧の絶滅をグリモアよりも先に知っているといった情報面など、さまざまに表れている。


本編(第49話-1)では、国際宇宙基地アポロンの記録映像に間ヶ岾と始祖十家アルベルト・イェーリングが居ないことが問題とされていた。鳴子はこれを、間ヶ岾が既に宇宙基地を降りたと仮定して、イェーリングはゲートに(魔物に)変わったのかもしれないという説を提出しているが、本人も認めるようにこれには強い根拠はない。

ひとつの仮説として、間ヶ岾とイェーリングはアポロンのゲートを通ってどこかに消えたという見方はできるだろう。国際宇宙基地アポロンの映像の回収を行ったレイド『1679』では、結希はアポロンのゲートを「断続的に発生していた霧の嵐」と診断しているのだから、映像に記録されていない範囲で間ヶ岾やイェーリングが霧の嵐に巻き込まれた可能性は考えてもいいと思う。


余談だが、アポロンにゲートが発生した時期が「3年後」と言われているのは、おそらく暦のループを考慮してのことだろうと考えている。つまり『1679』で起きた霧の嵐と裏世界のアポロン虐殺のゲートは、仔細は異なるがイベント単位では同一であるという解釈だ。

鳴子「それより…気になるのは日付だ。」 心(裏)「…今から3年後、ですね。」

(第49話-1『自称一般的女子』)

3年といえば時間停止の魔法で足踏みしていた年数そのものだ。時間停止以後の表世界は、裏世界に起こる第8次侵攻以外のイベントをループ年数分だけ先取りしている可能性がある。たとえば2周目の2014年では、本来2015年に起こる汐ファン襲撃やシローの覚醒があった。これに基づいて、裏世界の2018年に起こるイベントは表世界の2015年に起こるという考え方はできる。

一方で、別解釈としてはループ年数を加えて「第8次侵攻の年から見て6年後、2021年」という見方もできなくはない。この場合は『1679』とアポロン虐殺の年数はズレていても構わないとする。

初音「あの時期って間ヶ岾は宇宙なんだっけ? よくわかんねーな。」

(兎ノ助、あのね。2020年4月12日『神宮寺初音の誕生日』)

アポロン虐殺を2021年に置くメリットは、ゲネシスタワー陥落事件の世界(2020年)で間ヶ岾がまだ宇宙に居るという初音の台詞が矛盾しなくなることだ。うろ覚えっぽく言ってるのでそこまで気にしなくてもいいと思うが……。

表世界・ゲーム本編の時間軸

表世界に来てからの間ヶ岾はグリモアの敵として八面六臂の活躍を見せた後、ウィッチの死亡、神宮寺光男の告発、実崎真澄警視副総監の逮捕などにより追い詰められる。霧を取り込んで真の魔物化、彼のいう「真の共生」を果たしたと信じた末に滅ぼされるのは、本編に直接描かれている通りだ。

また、明言されていなかったように思うが(読み込みが足りないだけかも)、『愚者の檻』で示されている霧の護り手による魔物制御技術の獲得にも関わっていた可能性が高い。表世界にとっては頓挫していたPOTI技術(第20話-13)も、裏世界から来た間ヶ岾ならばその先があると知っていたはずであり、この時点で彼が彼自身の裁量で魔物制御技術を獲得していたとすれば『阿川奈鬼譚』にもスムーズに接続できる。チトセの行ったデクのブレイクスルー工作と似たようなことを間ヶ岾もやっていたと考えるのは、そこまで不自然ではないだろう。

共生思想

間ヶ岾の目指していた「真の共生」とは具体的にはどういったものだったのだろうか。彼は魔法使いを人類進化の形と見なし、その源泉となる霧を攻撃するおこないを強硬に咎めていた。たとえば人が魔物になる分にはそれも良しとして、人類文明が今のかたちで存続することにはあまりこだわりが無かったようにも思う。

「地球規模で見れば、魔物が地上の王者となり人類が滅亡するのも、また自然の摂理である」という論者は作中に意外と居なかった気がするが、間ヶ岾はどうだろう。宇宙に行って未来を見たという彼は、百年後に霧が消えるようではいけないと言っていた。では霧が消えさえしなければ、ゲネシスタワー等の拠点で小さく小さく生きる人類と、それを覆う霧の姿は彼の理想だったのか? 間ヶ岾本人がアーミッシュに惹かれているとも思えないが……。

あるいは、のちの『グリモアA』における平和な共生を彼はどう思うだろうか。社会をひっくり返すほどの影響を与える一方で、ある意味人類文明に埋没しつつあった霧のリゼットのことを。モンスターも共生の一形態であると一応認めていた彼ならば、それも良しとしてくれただろうか? あるいは霧の魔物という壮大な存在を意思という主体に押し込め、あろうことか一個体として従わせるなど許されることではないと激怒していたかもしれない。

宿題

  • 霧と合一する前後で、彼の知識と思想に変化があったかどうか

最終更新